地震大国、日本。いつどこで大規模な地震が起きてもおかしくない昨今。国は地震対策に乗り出しています。
私は不動産会社に勤務する宅建取引士ですが、重要事項の説明をするときにこの耐震診断結果については説明の義務があります。
私たちの命を守る住宅であって欲しいのに、必ずしもそうでない現実があります。
なぜ耐震改修は必要なのでしょうか?また新耐震と旧耐震とは?
知っておきたい耐震についてわかりやすく説明します。
Contents
建物の耐震化が必要な理由
地震の多い国、日本
地震大国、日本と呼ばれるほど日本の国土で地震が頻発しているのは周知の事実ですが、熊本を襲った大地震や阪神大震災、東日本大震災など巨大地震が繰り返される現実は私たちの想像をはるかに超えています。
私の住む街、福岡もひと昔前までは地震が来ないというのが街のアピールでした。ところが2005年の西方沖地震以降、地震に無関心ではいられなくなりました。
ひと前昔は地震が来たら机の下にもぐれと言われていたものですが、その神話も崩れ去るほど及びつかない大きな被害で、机の下にもぐりこむことが安全ではない現実を目の当たりにしました。
建物の安全性や大災害後に生じるマンションなどの共同物件の権利関係の扱いについても、従来のままでは十分に対応できなくなったという現実があります。
二次被害を防ぐため
1995年(平成7年)1月に起きた阪神・淡路大震災で亡くなった方の約9割が建物の倒壊や家具の転倒によるものという報告があります。
そして調査してみるとそれは現在の耐震基準を満たさない1981年(昭和56年)以前の建物に被害が集中していたことが分かりました。
このような背景を受けて「建築物の耐震改修の促進に関する法律(耐震改修促進法)」が同じ年に制定され、さらに2013年(平成25年)11月25日に改正されました。
これに基づく国の基本方針において、住宅や多数の人が利用する建物の耐震化目標を定め現在の耐震基準を満たすように建て替えまたは耐震改修を促進しているところです。
建築基準法に基づく法令
旧耐震と新耐震
では新耐震と旧耐震の違いは?
先ほど申した1981年(昭和56年)というのがひとつの基準となっています。
順に説明すると、
耐震設計の基準等は建築基準法に定められています。その基準は過去の地震被害を教訓にして強化されてきました。
歴史をたどると、1923年(大正12年)に起きた関東大震災の前までは、地震に対しての意識がそれほど強くなく建物が設計されておりました。
それから1948年(昭和23年)の福井地震、1964年(昭和39年)の新潟地震、さらには1968年(昭和43年)の十勝沖地震と巨大地震の被害を踏まえ、地震に対する基準も変遷を重ねることとなりました。
その中でも1978年(昭和53年)に起きた宮城県沖地震のあと、1981年(昭和56年)に行われた建築基準法の大改正はこれまでの中で最も重要な改正となったのです。
今から35年も前の改正なのですが、建築の専門家はこれを「新耐震」と呼んでいます。
それほど前の建築物を「新」と呼ぶのも私たちが聞いてもピンとこないのですが、「新耐震」で設計されているのか(つまり昭和56年5月31日以降)、それ以前に設計されている「旧耐震」なのかでは、大きな違いがあるのです。
その違いというのは、1995年(平成7年)の兵庫県南部地震の被害で知ることとなります。
建物の被害状況が新耐震と旧耐震とでは明らかに差があるデータが出されたのです。
無被害・軽微な状況は新耐震で74.7%に対して、旧耐震は34.2%、
大破・倒壊の被害においては新耐震はわずか8.6%に対して、旧耐震では28.5%に及びました。
耐震基準とは?
では、旧耐震と新耐震の基準はどう違うのか見てみましょう。
耐震基準とは、一定の強さの地震が起きても倒壊または損壊しない建物を建てるように建築基準法が定めている基準のことです。
その内容は、
●旧耐震:昭和56年5月31日までに設計された建物
震度5強程度の地震ではほとんど損傷しないことを検証した建物
●新耐震:昭和56年5月31日以降に設計された建物
震度5強程度の地震ではほとんど損傷しないことに加え、震度6強~7に達する程度の地震で倒壊または崩壊しないことを検証した建物
耐震化の進捗状況は
地震活動が活発な環太平洋地震帯に位置する日本では近い将来、首都直下地震や南海トラフ巨大地震など日本全国で大地震が高い確率で来ると予想されています。
その被害を最小限に食い止めなければなりません。そのためには住宅や建築物の倒壊がない耐震化が重要となってくるのです。
しかしながら、2008年(平成20年)時点で住宅で1000万戸、多くの人が利用する建築物で約8万棟の耐震性が不十分な状態となっており、これらの建物の耐震化が急がれています。
耐震改修促進法とは
改正耐震改修促進法の経緯
1995年(平成7年)の兵庫県南部地震(阪神・淡路大震災)では6400人を超える方が犠牲となり、約21万棟の家屋が全半壊しました。
犠牲になった方の死因は建物が倒壊しその下敷きとなった圧迫死であり、その実に9割が古い木造住宅であったことが報告されています。
その教訓をもとに同年12月に「建築物の耐震改修の促進に関する法律」いわゆる耐震改修促進法が施行されます。
それにより新耐震の基準を満たさない建物については積極的に耐震診断や耐震補強を強めていくことが目的だったのです。
ところが、思うように耐震化は進まず2004年(平成16年)に新潟県中越地震が起きてしまいます。
その後、2005年(平成17年)10月28日に改正耐震改修促進法が成立し、2006年(平成18年)1月に施行されます。
目標の設定
耐震強化金物。見た感じずいぶんと強そう / freeheelskiing_2
今回改正されたのは、病院や店舗、旅館など不特定多数の方が利用する建築物や、学校、老人ホームなどの避難場所として使用される施設などの建築物のうち大規模なものが対象となります。
上記に該当する建築物については耐震診断を行い報告することを義務付けし、その結果を公表することとなっています。
耐震診断の義務付け対象の建築物とは?
まず、
1. 不特定多数の者が利用する大規模建築物
・病院、店舗、旅館等:3階以上かつ床面積の合計が5000平方メートル以上
・体育館:1階以上かつ床面積の合計が5000平方メートル以上
2. 避難確保上特に配慮を要する者が利用する大規模建築物
・老人ホーム等:2階以上かつ床面積の合計が5000平方メートル以上
・小学校、中学校等:2階以上かつ床面積の合計が3000平方メートル以上
・幼稚園、保育所:2階以上かつ床面積の合計が1500平方メートル以上
3.一定量以上の危険物を取り扱う大規模な貯蔵場等
・危険物貯蔵場等:1階以上かつ床面積の合計が5000平方メートル以上
耐震診断結果報告期限は2015年(平成27年)12月31日までとなっておりました。
所有者の努力義務
市役所行った。耐震工事中だった。 / Norisa1
これらに該当する建物の所有者は、建築物が現行の耐震基準と同等以上の耐震性能を確保するよう耐震診断や改修に努めることとされています。
では、私たちの主な住居である木造住宅はどうなのでしょうか?
耐震改修促進法の建築物は先に述べた建物が対象となり、床面積が1000平方メートル以上の木造住宅というのはほとんどなく、一般的な木造住宅においては、上記耐震改修促進法における特定建築物には該当しません。
しかし、阪神・淡路大震災の教訓からすれば、法的義務がない木造住宅においても耐震診断及び耐震改修が重要であると言えます。
各自治体によって改修費補助事業があり、補助金が出たり、税金の緩和措置があったりします。(自治体により異なります)
また無料診断している自治体もあります。私たちの命を守る家について真剣に考えてみようではありませんか。
Note
ここでは「旧耐震」と「新耐震」の違いについてを説明しました。
もし今から賃貸住宅を探すという方はこの昭和56年5月以降に建てられた物件、またはそれ以前に建てられた物件でも耐震診断、耐震改修工事を行っている物件かどうかを見極めるようにしてください。
またご自身がお住まいの持ち家が旧耐震ならば耐震診断を受けることをおすすめします。
とは言っても多額の費用がかかることは免れません。各自治体によって支援制度がありその内容は違うので知っておくことは重要ですね。