賃貸物件の決め方についてみてきました。
賃貸住宅を探すうえで不動産会社選びは大切です。
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しっかりリサーチしたら実際の物件を内覧します。
関連記事賃貸物件の内覧時に押さえるべきことを【チェックポイントリスト付】で説明します
賃貸物件を決めたらいよいよ契約に入ります。
のちのちのトラブルにならないように、押さえるべきポイントをしっかり把握しておきましょう。
Contents
まずは入居申込書から
申込書を提出
内見して気に入った物件が見つかったら、申し込みをして契約という流れになります。
ただ申し込みをしたからといって必ず契約になるとは限りません。
申し込み後、審査が行われ審査にパスして晴れて契約になります。
申し込みをするときの注意点
申込書のフォームは不動産会社によって異なります。
当然連帯保証人の数や必要書類も申し込む物件によって変わるので確認しましょう。
ほぼ共通なのは、
- 申し込み本人が社会人であれば、勤務先・勤務年数・年収
- 申し込み本人の社員証や学生証など身分を証明できるもの
- 申し込み本人の源泉徴収票や納税証明書などの収入を証明するもの(コピー可)
- 連帯保証人の情報
などの提示が必要となります。
物件や不動産会社によっては、申し込みの際に申込金として約1万円~家賃の1ヶ月分必要っとなるケースもあります。
この時点での申込金は、本当にこの物件を借りたいのか申込の意思を確認するためのもの。
契約が進めば相殺されます。
またキャンセルとなっても返還されます。
これは宅建業法で決められています。
申込金を支払ったときは、必ず「預かり証」を発行してもらいましょう。
申込金は「私は条件が整えばこの部屋を借ります」という意思表示をするもので、契約の意思が固まるまで優先的に部屋を確保してもらうことを目的として預けるお金です。
家賃・敷金・礼金について知っておきたいこと
物件を内見するうちに、いい物件に出会えば、自分の予算を超えて多少家賃が高くても、ちょっと無理をすれば何とかなる…と思ってしまいますよね。
最初、物件を見る前までは現実的でも、見てるうちにだんだん気が大きくなって、理想が膨らんでいきます。
しかし待った!
そこでぱっと即決しないで一度冷静になってみましょう。
家賃はお給料(手取り)の25~30%程度を目安にする
素敵な物件をみてしまうと、家賃は高いけど多少生活を切り詰めれば大丈夫!という気持ちになります。
しかしお給料の半分近くをお家賃で費やしてしまうのは、最初はよくてもどんどん生活が苦しくなっていきます。
生活してく中で急な出費もあるでしょうし、物価の高騰などもあり得ます。
ここで言う「家賃」とは、共益費も含んだ金額のことです。
無理のない生活をするには、
家賃はお給料の手取り金額の25%、つまり1/4に抑えておくようしたほうがいいのです。
とはいえ、仮に20万円の手取りだと、5万円の家賃ということになりますね。
そうなれば物件探しも少々厳しくなるので、上限30%くらいを見ておきましょう。
敷金とは?
賃貸物件を借りるときに最初にかかる費用の中で忘れてはならないのが「敷金」です。
ひと前昔(20年ほど前)は、敷金は家賃の6ヶ月程度が当たり前でした。
実に半年分の家賃ということになりますね。
ところが最近では1~2ヶ月くらいになっています。
家を借りている間、預けた敷金には利息などはつかず退去する際に、未払い賃料や、原状回復代などを差し引いた残金が借主に戻るというものです。
最近ではこの敷金が「0円」という物件も増えてきました。
しかし、よく考えておかなければならないのは、退去する際にかかる原状回復費用は実費となるということです。
つまり最初に預けた敷金で原状回復するのか、
または退去のときに原状回復代金を払わないといけないか…の違いだけで、かかる費用は同じということですね。
原状回復…最初に借りたときの状態に戻す工事(クロスの張り替えや、壊したものがあればその補修、床の清掃、ハウスクリーニングなど)
礼金の慣習
礼金については、地域によってずいぶん変わってきます。
礼金をとらない地域もあれば、敷金はとらず礼金をとる地域も…。
また地域だけではなく、貸主によっても変わってくるので、一概に地域性だけとは言えません。
敷金と礼金は借主が最初に貸主に払うお金で名前が違うだけで同じものだと思っている方も多いようですが、意味が違います。
先に説明した「敷金」は退去のときに必要額を差し引いた残金は返金されます。
しかし、礼金は借りるときに借主が貸主にお礼として渡すお金なので退去のときに返ってきません。
また礼金を原状回復費用に充当することもできません。
従って退去の場合は実費で原状回復費用を払わないといけないということになります。
《用語の説明》
貸主…賃借人→賃貸借の当事者たる貸主、つまり大家さんやオーナーのことを指します。
賃借人…賃貸借の当事者たる借主→借主、つまりあなたが物件を借りるならあなたのこと。
忘れてならない「仲介手数料」
仲介手数料とは、不動産会社(仲介会社)に支払うお金です。
家賃の1ヶ月分が通例となっています。
その際、単純に家賃だけで共益費は含みません。
よく仲介手数料半額とうたっている業者もいますが、
そのからくりというと…
不動産会社の収入として、借主から頂く仲介手数料と、貸主から貰う広告宣伝費(業界ではADと言っております。)の両手(これも業界用語?両方から貰えるという意味です。)が貰えることが多いのです。
仮に10万円の家賃の物件を決めたなら、
借主(つまりあなた)から10万円、
オーナーさま(貸主)から10万円、
合わせて20万円が担当営業の営業数字となるのです。
オーナーさまは早く物件を決めて欲しいので、この広告宣伝費を1ヶ月分ではなく、2ヶ月、3ヶ月あげるから早く決めてね!という営業マンにとってはおいしい物件もあります。
当然広告宣伝費が多いものから決めたくなるのは営業マンとして当然のこと。
またその物件が専属契約を結んでいるのなら、他の物件よりも優先して決めていかなければなりません。
そのため仲介手数料を減額してでも決めたいという意図があるのです。
仲介手数料半額といった物件はそんな背景があるということを含んでおいたほうがいいですね。
ただその物件が粗悪なものというわけでは決してなく、あなたがその物件がいい!とマッチングしたなら非常にラッキーなお話ということですね!
家賃交渉はしてみるべき
ここからは、知っておくと得する交渉術について説明します。
フリーレント
仲介業者は、借主からもらう「仲介手数料」の他に家主からもらう「広告宣伝費」があるというのは前述しました。
しかし、ここにひとつからくりがあります。
物件によりますが、家主さんとしては空室があるよりも満室のほうがいいわけなので、
例えば1ヶ月間は家賃無料でいいからお客さまを決めてくださいね!とフリーレント期間を1ヶ月、2ヶ月と設けているものもあるのです。
フリーレントとは、
例えば、家賃を値下げしてほしいと要望があったとします。
「わかりました。」とその部屋の家賃を下げた場合に起こりうるトラブルとして、
すでに高い家賃で入居している方からのクレームです。
なので、紹介媒体に安易に安い賃料で広告掲載するのはためらうのです。
実際に借りようかと検討している人が家賃交渉をしてきたときに家賃をまけるかわりに、1ヶ月分の家賃を免除しましょう。(半年の場合もたまにあります)というのがフリーレント。
読んで字のごとく無料で借りれる期間ということなのです。
フリーレントと広告宣伝費の関係性
家主側からすれば、FR(フリーレント)で1ヶ月免除しようが、その分を広告宣伝費として仲介業者に渡そうが、要は早く借り手がつけばいいわけです。
なのでFR(フリーレント)とAD(広告宣伝)はどう操作してもいいですよと仲介業者にゆだねます。
例えばFR(フリーレント)2ヶ月の物件を決めた場合、
借主がフリーレントを適用せず通常の契約を交わした場合、
営業マンの営業数字は、借主からの仲介手数料の1ヶ月分、
貸主からのAD(広告宣伝費)2ヶ月分。
合計3ヶ月分となるのです。
賃料交渉が厳しいならフリーレントの申し出を!
最初からフリーレント1ヶ月とうたっている物件もあれば、そうでない物件もあります。
家賃の値交渉が難しいならば、ぜひフリーレントを申し出してみてください。
仮に10万円の家賃で、2ヶ月のフリーレントの場合、月の家賃が1年間8万3千円になったと同じことになります。これはかなり大きいですよ。
フリーレント適用になったら…
そして晴れてフリーレント適用となった場合、1ヶ月、または2ヶ月の家賃が無料になります。そうなれば初期費用が抑えられるので嬉しいですね。
しかし、喜んでばかりではありません。
知っておきたいデメリットとして、
もしフリーレント適用して、所定の期間に満たない期間で退去する場合、解約違約金が発生するということです。
違約金はフリーレントの月数×月額家賃と設定されているところが多いです。
なので短期しか借りないとわかっている方、頻繁に引越しをする方には向いていません。
住宅保険・火災保険・地震保険は必須
賃貸で保険に入る意味
物件が決まり契約が進んでいくと、火災保険加入義務ありとうたっている物件が多いです。
特に住宅の賃貸であればほとんど必須項目となってきます。
火災保険って本当に必要なのでしょうか?
ざっくり言えば、自分の過失で部屋を燃やしてしまった場合、現在の日本の法令では失火責任法というものがあり、隣や周りの人に被害を及ぼしても賠償責任は負わなくてもいいようになっています。
つまり、自分が原因で火災になって隣の部屋の家財道具一式などを燃やしてしまっても弁償しなくていいということです。
ほっと一安心。
しかし盲点があります。
部屋を退去する際に原状回復義務があり、部屋をもとの通りに戻して家主に返還しなければなりません。
火災保険に入っていなければ、それはあなたが支払わなければならないのです。
また、逆の立場で考えてみましょう。
仮に隣の人が火元であなたの部屋にも火がおよび家財道具一式失ったとしても、隣の人に賠償を求めることはできないのです。
そんな場合に補償してくれるのが、火災保険です。
なので火災保険は入るようにしましょう。
不動産会社では大抵は保険の代理店となっており、その商品を当たり前のように契約するように勧めてきます。
特に問題なければそれでもいいのですが、これは義務ではありません。
自身で加入したい保険会社の商品があればそれに加入して加入した証拠(申込書の写し、証書の写しなど)を添付すれば大丈夫なところも多いので、不動産に確認しましょう。
また大切なものなど補償したい場合はオプションもあるので、契約内容を確認し、追加することもできます。
保証会社について
連帯保証人が必要
契約にあたっては連帯保証人が必要となってきます。
賃貸借契約で求められるのが「連帯保証人」であり、「保証人」とは大きな違いがあります。
例えば借主が家賃を滞納した場合、
保証人であれば、「滞納している家賃を代わりに払ってください」と請求が来ても、「借りている本人に言ってくれ」と突っぱねることができます。
一方、連帯保証人の場合は、借主とまったく同じ責任を負わなければなりません。
つまり滞納した家賃は連帯保証人が払わないといけないということです。
このように非常に重たい責任を負う連帯保証人は、たとえ親でも収入が少ない場合はなれないこともあるのです。
家賃保証会社を必須とするところも…
最近では、保証会社を必須とする不動産会社も増えてきています。
それは貸主や管理会社にとって家賃の滞納リスクを軽減できるからです。
また借主にとっても連帯保証人が不要となるメリットがあります。
ただし、当然ながら保証料がかかります。
これは家賃保証会社によって異なりますが、家賃の半月分~1ヶ月分、家賃の30%~70%までとさまざまです。
また更新の際の手数料も発生するところもあります。
そして滞納した家賃は保証会社に返還しなくてはなりません。
重要事項の説明~契約まで
重要事項の説明とは
物件が決まり、入居申込書を出したら審査が行われます。
審査が通ったら晴れて契約の手続きに入ります。
契約の前に宅地建物取引士が宅建取引士証を提示して「重要事項の説明」が行われます。
このときに疑問点はしっかり聞くようにしましょう。
必ずしも担当の営業マンが重要事項の説明をしてくれるとは限りません。
そのときだけ資格をもった社員が説明にあたることが多いです。
(営業マンも取得を目指していますが、持っていない方も多いのが現状です)
なので担当営業マン以外の社員がこのときだけ現れて説明し出しても、これはよくある光景で不審に思わなくても大丈夫です。
重要事項説明を受けるときに確認しておく点
- 説明を受ける「宅地建物取引士」の確認と取引の態様
説明している人が免許証を提示して説明しているか、その不動産会社の取引の様態はどうか。
- 物件の基本的な概要
契約する部屋の住所、建物の構造、階数、部屋の号数、部屋の面積。
- 設備の確認
エアコン、ガスコンロ、洗濯機パンなど設備備品について確認。
- 貸主の状態
抵当権、根抵当権が設定されているかの確認。設定されていれば競売になったときにどのようなことになるのかの説明。
- 法令上の制限
都市計画法、建築基準法に基づく制限についてや用途地域の確認。
- 家賃・共益費・敷金などのお金に関すること
契約の最初に鍵交換費用や保証会社をつける場合は保証料が加算されていることがあります。
- 更新料
更新はあるのか(たまに定期借家契約の場合あり)、更新があれば何年ごとか、更新料はかかるのかなどの確認。
- 電気・ガス・水道などの確認
飲用水などのインフラの整備状況についての確認。
- 退去予告は何ヶ月前か
通常契約期間は2年の場合が多く、中途解約の場合退去予告は1ヶ月~2ヶ月前とされているところが多いようです。また1年未満で退去する場合は違約金が発生するところもあるので確認。
- 禁止事項
最近はペット飼育可能な物件も増えてきましたが、まだまだペット不可物件も多いです。併せてピアノなどの楽器演奏が不可の物件も多いので確認。
- その他・特約についての確認
耐震診断結果や石綿(アスベスト)の使用調査の有無
- 緊急連絡先
設備の故障やトラブルになったときの連絡先はどこか確認。
その他特約があれば、確認しておきましょう。
特に特約で多いのがフリーレントを設定したときの条件。
いつからいつまでがフリーレント期間なのか、その間の賃料支払い(共益費については支払うことが多い)について、フリーレント適用期間に解約した場合の違約金についての内容が盛り込まれています。
あと売買であれば細かに確認するべき点がありますが、賃貸ではこの内容を確認しておけばいいでしょう。
契約時に注意すべきこと
重要事項の説明と契約書の取り交わしは同時に行われることも多いようです。
その流れで鍵の引き渡しとなります。
鍵を受け取れれば晴れてその物件はあなたの住まいとなります。
その際に必要書類の漏れや、契約書の不備(印鑑の押印漏れなど)があると、お部屋の鍵を渡してもらえないという事態になります。
必要書類は必ず忘れないように用意しましょう。
《必要書類》
- 本人の住民票
- 本人の印鑑と印鑑証明
契約書に押印する印鑑も印鑑証明と同じもの - 収入を証明するもの
源泉徴収票や確定申告のコピー - 連帯保証人の同意書
(連帯保証人は住民票、印鑑証明など必要です。)
契約時のもらうもの
最後に契約時にもらうものを確認しましょう。
□ | 賃貸借契約書 |
□ | 重要事項説明書 |
□ | 火災保険証券(加入の控え) |
□ | 敷金・礼金等の預かり証 |
□ | 部屋の鍵 |
これで晴れて新居にお引越しです。
あとは電気・ガス・水道・電話・インターネットの引き込みなどの手配をとり、引っ越しに臨みましょう。
Note
1年のうちで最も賃貸物件が動く時期は春。
この時期の家賃交渉は難しいです。
なぜならば何もしなくてもどんどん物件が決まる時期だからです。
可能であれば時期をずらすというのも方策のひとつ。それが難しいのであれば、争奪戦に遅れを取らないよう情報収集と迅速な行動と、瞬時の決断力が決め手です。
また契約までに細かな部分まで確認をとり疑問点は解消しておくようにしましょう。