長崎県南東部にある半島、島原。島原と言えば、雲仙や具雑煮で有名ですね。
私の父母は島原出身で、お盆になると母は「いぎりす」をつくり、親戚宅の法事に差し入れとして持って行きます。
ちょっと不思議な味わいの「いぎりす」
見た目は羊羹のようで表面はやや光沢があり、かまぼこのようであり、具の入ったごま豆腐のようでもあり…。
この食べ物は、海藻と米ぬかを使って作ります。島原ではかつては日常食として食べられていたようですが、最近では家庭で作る人が少なくなり、料亭など冠婚葬祭の席で出されることが多くなりました。
現代人がほとんど作らなくなった「いぎりす」
ひさびさに79歳の母が作っていたので、レシピを教わりました。伝統の味を引き継ぐべく、ここに記しておきます。
島原名物「いぎりす」
「いぎりす」とは?
お盆の午前中、台所に立つばぁばぁ(私の母)に、娘が「何作っているの?」と質問。
ばぁばぁ:「いぎりす」
娘:「イギリス…??」
ちょうど、イギリス海外研修から帰国したばかりの娘の頭には、こちらの「イギリス」が真っ先に浮かんだようでした。
福岡生まれの私も、子どものころ、母に同じ質問をして、「イングランド」の「イギリス」を想像して、変な名前…と思っていました。
これは、イギス(紅藻類の海藻)のことで、「いぎす」がなまって地元民が「いぎりす」と言い出したもののようです。
「いぎりす」の歴史
もともとは、愛媛県今治地方に伝わる「いぎす豆腐」の伝来のようです。
1637年島原の乱で、一揆に加わった多くの農民が死亡して人口が激減した島原に、復興対策として幕府が四国の各藩から農民を移住させました。
そのときに移民が持ち込んだ「いぎす豆腐」がもととなって、「いぎりす」が作られるようになったということです。
「いぎりす」の作り方
材料
アバウトですが、約10人分
- いぎりす…100g
- 米ぬか…200g
- 水…8~9カップ(1600CC~1800CC)
- ピーナッツ…1カップ
- 豆腐…1丁
- 人参…1本
- きくらげ…3枚
- ピーマン…1個
- サバの水煮缶詰…1缶
- 薄口しょう油…1カップ
- 砂糖…大さじ3
- サラダ油…大さじ1・1/2
いぎりすってこんな海藻。おっと今日が消費期限でした(笑)
今回は、サバの水煮を使って手軽に作ります。
How to cook
米ぬかの一番汁でいぎりすをひたひたに浸しておきます。
(※米ぬかを使うことによってえぐみや不純物を取り除きます。)
豆腐は1cm角、人参、きくらげ、ピーマンは千切りにします。
ピーナッツはだいたい1カップ(200㏄)くらい。
すり鉢に入れて、粗めにすりつぶしていきます。
ひたひたに浸したいぎりすを絞り、鍋に入れます。
米ぬかの二番絞り汁をつくります。
約8~9カップ分程度の水に布巾にくるんだ米ぬかを絞ります。
いぎりすを入れた鍋に米ぬかの二番絞り汁を入れて弱火で煮溶かしていきます。
その間に別のフライパンで材料を炒めていきます。
フライパンを火にかけて、油をしき、人参、豆腐、きくらげ、ピーマンを炒めます。
すりつぶしたピーナッツ、サバの水煮を加えて軽く炒めます。
砂糖、薄口しょう油で味付けし、軽く煮詰めておきます。
中火で10分程度煮込むと、いぎりすが溶けてとろみが出てきます。
この程度、トロトロになったら火を弱めます。
フライパンで煮詰めた具材を溶かしたいぎりすの中に入れます。
軽く混ぜ合わせ、火を止めます。
流し箱に流し、固まったらできあがり。
切り分けていただきます。
まとめ
独特な臭みが少々ありますが、ピーナッツのサクッとした食感とサバの風味が拡がり、なんか癖になりそうな味です。
母はいつも、サバの水煮やピーナッツが入った具入りのいぎりすを作りますが、仏事などに用いるときは、中に具を入れずに作る「白いぎりす」にして、ごましょう油や白和えで食べるようですね。母は気にせず具入りいぎりすを仏事にも用いています。
今回は手軽にサバの水煮缶を使って作りましたが、昔の人はサバを三枚におろして薄く味付けしたものを用いていたようです。アジやいわしを使う家庭もあり、そこそこで味が変わるのも特徴的です。
現在では母の故郷島原でも、自宅でいぎりすを作る家庭が少なくなっているようで、わざわざ母にレシピを聞いてくる方さえいるくらい、滅多に作らない料理になってきているようです。
その理由のひとつに「いぎす」(海藻)が、なかなか手に入らないということがあります。
母も物産展やスーパーなど日ごろからチェックしているようで、売っていたらまとめ買いしています。
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その昔、母がお嫁に来た当時、父方の親戚であるおばさんが作ってもてなしてくれ、その味にすっかり魅了された母は、いつか自分も作ってみたいと思ったそうです。
父母が田舎に帰るたびに、母の好物の「いぎりす」をわざわざ作って待っていてくれたという今は亡きおばさんの思い出話を聞きました。
母曰く、そのおばさんが作ってくれた味には到底行きつけない…ということですが、それでも「いぎりす」を家庭で作る人がいなくなった今、これはまさに伝統の味です。
昔懐かしい「いぎりす」を食べてみたいという方にとって、役立つレシピになれば幸いです。
※2021年7月追記
南島原市ふるさと納税(やなぎ農産様)より画像引用のオファーを受け、当ブログの画像を掲載していただきました。
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