シクラメンの育て方は難しいと言われていますが、重要なのは温度管理。
そこさえクリアすれば冬に楽しむ花として長い期間鑑賞できます。
ハートの形がかわいい葉っぱと、少しはにかんだようにみえる可憐な花のシクラメン。玄関先に飾ってお客さまをお出迎えしませんか?
Contents
シクラメンはどんな花?
クリスマスシーズンになると、ハート形の葉にうつむいた小さな花が可憐なシクラメンの鉢植えを目にします。
花の少ない冬季に多くの花を長く咲かせてくれるシクラメンは、地中海原産のサクラソウ科の多年草植物です。
花言葉は「内気」「はにかみ」「遠慮」
シクラメンの花のつき方がまるで恥ずかしそうにうつむいて見えることから、「内気」「はにかみ」「遠慮」などの花言葉がつけられています。
下を向いて花を咲かせるシクラメンにぴったりの奥ゆかしい花言葉ですね。
和名は「豚の饅頭」
そんな奥ゆかしいシクラメンの和名は意外にも「豚の饅頭」。なんだかしっくり来ませんね。
これは、放し飼いの豚がシクラメンの球根を食べてしまうことから命名されたようで、sows bread=雌豚のパンから日本風に訳されたもののようです。
シクラメンは「カガリビバナ(篝火花)」とも呼ばれています。反りかえった花の形がかがり火に似ていることから呼ばれるようになりました。
日本に入って来たのは明治初期
シクラメンが日本で栽培されるようになったのは、明治時代の初期とまだ歴史が浅い植物です。
当初ドイツの種苗会社から種を取り寄せ栽培をはじめましたが、なかなかうまく開花させることができませんでした。
1985年ころになると冬の鉢花の女王としてシクラメンの人気が高まり、底面給水という画期的な鉢が発売されました。
それにより水やりの失敗がなくきれいな花を咲かせることができるようになり、普及が進みました。
室内でも上手に育てるコツ
枯れた花を摘み取る
日光が当たるように葉組みをする
涼しく陽が当たる場所に置く
枯れた花を摘み取る
シクラメンの花が枯れてきたら、花ガラや葉のつけ根近くをつまみ、軽くねじるようにして摘み取りましょう。花ガラをそのままにしておくと新しい花が咲きません。
ハサミなどで切ると切り口から雑菌が入り腐ってしまうため、必ず手でちぎるようにします。
日光が当たるように葉組みをする
シクラメンの花は購入して1ヶ月もすると葉が込み合ってきます。
見た目のバランスが悪くなるばかりでなく、小さなつぼみが葉の下に隠れてしまい日光が当たらず咲く前に枯れてしまう場合も。
より多くの葉と株に光が当たるようにするには葉組みを行います。
中心にある葉を外に引っ張り、外側の葉に引っかけるようにしましょう。株の中心部にスペースができ、日光が株の中心まで当たるようになります。
涼しく陽が当たる場所に置く
シクラメンはもともと涼しい雨季の期間に開花する植物です。この時期は日本でいう「冬」になります。
夏の暑さには弱い花なので涼しい場所に置きます。また日当たりのよい場所で管理するように心がけます。だたし直射日光や西日などには注意をしましょう。
2年目も花を咲かせる夏越し法
シクラメンは夏に休眠させる方法と、休眠させない方法があります。
葉が枯れて休眠状態になった場合
初夏に完全に葉が枯れて休眠状態になった場合、日光が当たらない風通しのいい場所に移動し夏越しをさせます。
その間は一切水を与えず、肥料も一切与えません。これはシクラメンの原産地の風土に合わせた方法で6月~10月頃は雨が降らない高温乾燥期に入り休眠をします。
ただ、日本の夏は高温多湿となるため球根が腐ってしまう場合があります。
休眠状態にならなかった場合
生育させながら夏を越し休眠状態にならなかった場合を非休眠法と言いますが、その場合は水やりは通常通りします。
肥料は薄めの液体肥料を月1回程度与え、半日陰の涼しいところに置いて夏越しします。
シクラメンの水やりと肥料のやり方
底面吸水鉢は水がなくなったら足す
鉢植えで売られているシクラメンの鉢のほとんどは底面吸水鉢です。
鉢底に水を溜める受け皿があり、そこに水を溜めるとスポンジなどで水を吸い上げて水やりをする仕組みです。
受け皿に水がなくなったら水を足すだけでいいのでメンテナンスが簡単ですね。
花の上から水をかけない
普通の鉢で植えられている場合は、土の表面が乾いたら底から水が流れ出すくらいたっぷりと与えます。
そのときに花や葉に水が当たると痛むことがあるので、葉を手でよけて水をやるようにしましょう。
鉢植えは表面が乾いたら水をたっぷりと
底面吸水鉢でも1ヶ月に1回程度、底の受け皿を外して鉢の土に水をたっぷり与え、鉢底から水を流します。
底面吸水鉢の場合は、排水されないので水を流して土の中の老廃物や濃くなった肥料の成分を土の外へ出してあげる必要があります。
9~5月までは2ヶ月に1回肥料を
9月~5月までの間は、2ヶ月に1回程度土の表面に化学肥料を与えましょう。
窒素(窒素)は葉や花を数を増やし色を鮮明にし、新芽の生育を促します。燐酸(リンサン)は根の伸張を促し花がよくつくようにします。
カリウムは張りのある根ができ、細胞を丈夫にする効果あり病気や環境の変化に強くなります。
1週間に1回液体肥料をうすめても
窓がついている底面吸水鉢であれば、1週間~10日に1回1,000~2,000倍に薄めた液体肥料を底の受け皿に入れます。
窓がついていない普通の鉢であれば、1週間~10日に1回1,000倍に薄めた液体肥料を水やりの際に一緒に与えます。
シクラメンのおすすめの用土
シクラメンを底面吸水鉢で育てるなら、水はけのよい用土を選ぶようにします。
適度に水分を保持することのできる保水性と、余分な水分を速やかに土の外に出す排水性、根の生育を促すために空気をスムーズに供給できる通気性を備えた用土がもっとも理想的。
シクラメンに適した土を用意する場合、もっとも簡単なのがシクラメン専用の培養土を購入することです。
赤玉土6:腐葉土3:粉状のパーライト1
はじめての方が自分で土作りにチャレンジする場合、赤玉土6:腐葉土3:粉状のパーライト1の割合で配合すれば失敗がありません。
説明書やいろいろなサイトに掲載している割合は微妙に違っていますが、どれが正解でどれがNGということではありません。
いろいろ試しながら自分がいいと思うものをみつけていきましょう。
庭植えの場合は苦土石灰を混ぜる
シクラメンは酸性土が苦手です。花壇などに庭植えする場合は、苦土石灰(くどせっかい)を混ぜて使いましょう。
苦土石灰とは、苦土がマグネシウム、石灰がカルシウムで、天然鉱物のドロマイトに熱を加えて砕き粒状や粉状に加工したものでアルカリ性の用土です。
用土の配合に悩む初心者にとって、配合なしにはじめられる培養土はそのまま使え、お手軽なのでおすすめです。
基本的な堆肥(たいひ)、腐葉土、ピートモス、赤玉土、バーミキュライトといった土を主原料に栄養成分が数種入っています。
シクラメンの植え替えとふやし方
植え替え時期は9月
シクラメンの植え替えの適期は9月です。
シクラメンが休眠した場合と休眠しなかった非休眠の場合の夏越しの違いによって、若干植え替えの方法が違ってきます。
ポイントを抑えましょう。2つの方法をご紹介します。
休眠した場合は根を切り落とす
鉢から抜いた株(球根)は古い土をすべて落として根を2~3cm残してばっさりと切り落として新しい土で植え替えます。
植え付けるときに球根の肩が地上部分に出るように植え付けるのがポイントです。
休眠しなかった場合は大きな鉢に植え替える
鉢から抜いた株はまわりの土を軽く落として1回り大きな鉢に植え替えます。この場合も球根の肩が地上部分になるように植え付けます。
深植えにならないように注意しましょう。
種から増やすと開花までに数年かかる
今育てているシクラメンの花が終わったときに、小さな丸いものが花茎の先端にでき、結実して種を作りはじめます。種が熟すまでは摘まずに株をつけたままにします。
熟した種を採取し、乾燥させたあと封筒などに入れ冷暗所で保管し、秋になったら種まき可能です。
種から育てると楽しみも倍増ですが、初心者が行うと発芽まで日数がかかり、開花するまで数年かかることがあります。
9~11月がまきどき
9月~11月頃に種をまきます。種をまいてから本葉が出るまでの約30日~50日の間は約5度~20度の温度を保つよう温度管理をします。適温は16度~20度の間です。
20度を超える環境が長く続くと腐り、逆に寒すぎると花が凍って枯れ、生長が止まってしまいます。風通しのよい場所で乾燥気味に育てて液体肥料を薄め月1回程度与えるようにします。
シクラメンにつきやすい害虫
灰色カビ病の症状と対策
枯れた葉をそのままにしておくと、灰色カビ病を発生します。枯れた葉や花はこまめに取り除くようにしましょう。
その際にハサミなどで茎の途中から切り取ると、切り口から病原菌が侵入することがあるので手でちぎるようにしましょう。
治療は、サンヨール乳剤の500倍液を散布します。
アブラムシの症状と対策
つぼみや新葉の裏にアブラムシがつくことがあります。アブラムシは高温、乾燥の状態で多発し、葉の裏に群生し汁液を吸います。
ノンガスタイプのアリルメートALまたはバイスロイドALを散布し駆除します。
アブラムシの駆除に効果的といわれるスミチオン乳剤です。発売以来40年近く高い効果と安全性が評価されています。
噴射式なら手軽に散布できて便利。
アブラムシ・グンバイムシ・チャドクガ・ケムシなどに効果大です。
シクラメンの花や葉がしおれる原因と対策
暑すぎても寒すぎてもNG
シクラメンの適した温度は5度以上15度以下です。
霜にあたると枯れてしまい、冷暖房の風に当てると乾燥でしおれてしまいます。
温度管理は注意が必要。20度以上だとしおれ、0度になってもしおれてしまいます。
人間が過ごしやすい25度の部屋はNG
一般的に人間が生活する場所は18度~25度が適温ですが、シクラメンはこの温度では暑さでぐったりとしてしまいます。
冬場の暖房がきいた部屋では置き場に注意しましょう。
玄関など人間が少し寒いと感じるくらいのところに置くのがいいでしょう。ただし凍結しない程度の温度管理が必要です。
底面皿の水切れ
植物は通常、冬場は水やりを控えるものです。気温が低いと水の蒸発が遅く、水をやりすぎると水が腐り根腐れをおこしてしまいます。
しかしシクラメンは冬もしっかり生育するため水が必要です。
うっかり水を切らしてしまうとしおれる原因となります。底面皿の水は絶えずあるようにしておくことが大切です。
【対策手順1】土から水をたっぷりやる
暑さであっても水切れが原因であってもしおれたときの対処の方法は同じです。
まず底面給水鉢の場合、底に水を溜めるのではなく、土の上から鉢底から水が出てくるまでたっぷりを水を与えます。
鉢皿に出てきた余分な水は溜めずに捨てます。
【対策手順2】しおれた花をヒモでしばる
まず汚くなった花の茎はくるっとねじるようにして茎ごと取り除いてあげましょう。
そのあと、残ったしおれた花を束ねてひもでくくります。
花の部分を束にして、花茎にひもを結んでしおれた首を立たせるようにします。そのときにあまりきつく縛らないように注意しましょう。
【対策手順3】新聞紙で葉ごと包む
新聞紙などで葉を上向きに起こすようにして包み、ぐるりと巻き上げます。シクラメンの葉や花が隠れるくらいの高さになるように調節します。
【対策手順4】そのままの状態で日陰に1日置く
この状態で日陰にまる1日放置して様子をみます。それでも戻らなかった場合、新聞紙を巻いた状態で霧吹きなどで水を吹きかけて湿らせます。
1日で戻らなかった場合、2~3日同じことを繰り返してみましょう。
シクラメンはこんな苗を選ぼう
葉が多く大きさのバランスがいいもの
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元気で丈夫な苗を選ぶポイントは、葉の数と、それぞれの葉の大きさや形をみることです。
シクラメンは1つの葉に対して1つの花芽を作る性質があるので、葉の数でどのくらいの花が咲くのか予測することができます。葉の数が多い株は花も多くなります。
また、葉の形がバランスのよいハートの形をしていたら健康なものと判断できます。大きな葉と小さな葉がバランスよく混在しているものは、次々と新しい葉が生まれているということなのでよいシクラメンです。
葉や花が変色していないもの
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葉や花が変色や、しみ、縮れがある場合、シクラメンのかかりやすい灰色カビ病の可能性があります。
また葉が黄色く変色していれば、萎凋病(いちょうびょう)にかかっている可能性があります。
球根や葉にカビがはえていないもの
ぱっと見てきれいにみえるシクラメンでも、葉を広げて株元をみると、カビがついていたり、花弁に斑点のようなシミがついていることがあります。
そのような苗は奇形になっていたり、害虫におかされている可能性があるので選ばないようにしましょう。
つぼみがたくさんついているもの
つぼみの数と大きさにも注目しましょう。できるだけつぼみが多いほうがよく、大小さまざまなつぼみがあるものが望ましいです。
さまざまな大きさのつぼみがあるということは次々と新しいつぼみが生まれているということにもなります。
品種が表示されているもの
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シクラメンには多くの品種があります。
中でも一般に流通している品種、コウム、ヘデリフォリウム、シリシアム、スーダベリカム、インタミナム、プルプラセンスなどは栽培管理がそれほど難しくないようです。
選ぶときは品種が表示されており、育てやすいものを選ぶとよいでしょう。
Note
シクラメンは暑すぎてもしおれてしまい、霜がついてもしおれてしまう案外ナイーブな植物です。
しかしこの温度管理さえしっかりしてあげれば、長い期間花を咲かせてくれます。
水やりも、底面吸水鉢に水を切らさないようにしておけば大丈夫という意外と楽にメンテナンスできる植物でもあります。
コツをおさえて可憐でかわいいシクラメンの花で玄関まわりを彩りましょう。